環境負荷の数値化しちゃう?環境ラベルの意義とは何か。

こんにちは!

SECOND HANDで環境分野でコラムを執筆している、大学生の長塚です。

セカハンさん上層部からの「この子ならやってくれるだろう」という熱い期待と「大学生なんかで大丈夫なのか」という懐疑的な眼差し、両方を一身に受け、大人の世界で頑張ってます!

これから始まるコラムにて、取材を通して、環境問題について読者の皆様に分かりやすくお伝えできればと思っています!

よろしくお願いします!

いきなりですが、2015年のパリ協定で「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」という世界共通の目標が掲げられ、そして日本国内で2020年に、温室効果ガスの排出量と吸収量の差し引きをゼロにするという「カーボンニュートラル宣言」が出されたことは、皆さまの記憶に新しいことかと思います。

…えっ、「全然記憶にない」って?「知らなかった」?

世界全体で環境意識が高まっている現代、環境問題に関する情報には常にアンテナを張っていかなければいけません!

最近では、CO2実質ゼロを目指す「脱炭素社会」という言葉を頻繁に耳にするようになったり、「ESG投資」という環境への配慮を考慮して企業の選別を行なう投資も一般的になってきました。

このように、「環境への配慮は大切だ」というのが私たちの共通認識であることに間違いないですが...

でも、具体的にどのような取り組みが行われているんだ??

特に今回注目する「企業」、私たちが日常で利用する商品やサービスを生み出す存在で、莫大な量のモノを流通させている分、環境への影響も計り知れない気がしますよね。

何をもって「環境に優しい」企業といえるのか?

製品が引き起こす環境負荷を数値化できるのか?

消費者は製品の環境情報を入手することができるのか?

など、疑問は多く残ります。

そこで今回は、一般財団法人サステナブル経営推進機構(略称「SuMPO」)のお二方(以下記載)に、企業の「脱炭素など環境情報の見える化」をテーマにお話を伺いました。

一般財団法人サステナブル経営推進機構

EPD事業部 部長 戸川孝則さま

EPD事業部 EPD事業室 室長 岩下博哉さま

SuMPOは企業におけるサステナブル経営の補助・促進を手掛ける機構で、その事業のうちの一つである「環境ラベルプログラム」に着目し、取材を進めていきました。

よろしくお願いします!

それでは行ってみよー!

そもそも「環境ラベルプログラム」って何?

https://ecoleaf-label.jp/about/index.htmlより引用

「環境ラベルプログラム」...これって一体何だろう?

ーSuMPO様の「環境ラベルプログラム」とはどのようなものなのでしょうか?

環境ラベルプログラムとは、ある製品の環境負荷を数値化して公開するためのプログラムです。商品のライフサイクル全体を考慮し、資源消費量や排出物量を計量するとともに、その環境への影響を評価します。生産されてから廃棄・リサイクルされるまでの環境負荷を考慮するということです。

つまり、ある製品が「生まれてから死んで、そして生き返る」までの環境負荷が管理されているということですね。

ー具体的にはどのような手順で実施されるのでしょうか?

ラベル申請する企業が算定ツールを用いて製品の環境影響を算定し、この結果を第三者が検証します。検証で環境情報データの問題ないことが確認されると、登録公開申請を経て、実際にその製品のデータが開示されるようになります(ラベル取得完了)。

また、算定前に、その製品のProduct Category Rule(製品種別の算定と宣言の基本ルールのこと)というものを選定する必要があり、Product Category Ruleがない場合は、新たに作成する必要があります。

この手順を経て取得する環境ラベルですが、SuMPOが扱っている環境ラベルはエコリーフとCFPの二つとなっています。

エコリーフとCFP
エコリーフ(左)とCFP(右)

エコリーフとCFP。皆さんは聞いたことありますか?

どのくらいの期間がかかる?

ーラベル申請から取得までどのくらいの期間を要しますか?

短かければ3か月ほど、長ければ半年ほどくらいですが、製品の種類によりますね。また、環境負荷を算定するためのLCA(※1)と呼ばれる手法を理解しているかどうかなど、申請した企業の知見の度合いも、要する期間に大きく関わっています。企業の経験が乏しく、LCAを一から学ぶとなると、やはりその分時間がかかります。

要する期間は、その企業の経験値の度合いに依るところが大きいのか。

(※1)LCA:ライフサイクルアセスメントの略称。製品の原材料調達から、生産、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクルにおける投入資源、環境負荷及びそれらによる地球や生態系への潜在的な環境影響を定量的に評価する手法のこと。

ー企業側は手放しでプログラムを進めるということでなく、あくまで主体は申請した企業自身ということになるのですね。

はい、主体は企業となり、必要なデータ収集や実際の算定などを行っていただきます。ただ、算定結果の第三者検証や情報開示はこちら側で行います。

また、LCAの経験がない企業に対しては、入門セミナーを動画として公開していたり、無料相談会や算定研修会(有料)を提供しているので、これらを積極的に利用していただければと思います。しかし研修だけを受けて全てを理解し実践に繋げることは難しいと思いますので、別途コンサルティングサービスとして提供している外部委託も併せて検討して頂きたいです。

二つの環境ラベルの特徴

ーSuMPOさんが扱っている環境ラベルの種類が二つあるのですね。
「エコリーフ」と「CFP」…それぞれどのような特徴があるのでしょうか?

どちらも環境情報を定量的に開示する宣言ですが、それぞれ開示する情報が異なります。エコリーフは気候変動、酸性化、富栄養化、資源消費…など3つ以上の複数領域の情報を開示しますが、それに対してCFPは気候変動のみの情報開示をします。CFPはCarbon Footprint of Productsの略称で、いわゆるカーボンフットプリントのことです。

また、それぞれの宣言のカテゴリや準拠する国際規格は異なります。

ーなるほど。どちらのラベルの需要が高い傾向にあるのでしょうか?

2022年12月31日時点において、去年一年で見ると、エコリーフが1,461件、CFPが898件と、エコリーフの方が高い傾向にあります。

SuMPO 登録公開数 https://ecoleaf-label.jp/document/k0sc7i00000000cy-att/Label_20221231.pdfより引用

CFPは、CO2量のみの算定という分かりやすいコミュニケーションの形がとれますが、海外に目を向けると、CO2量以外にも酸性化、富栄養化、資源消費など他領域に関する情報も求められていることが多く、国外での利用を視野に入れているのであれば、エコリーフを選択するケースが多いですね。

なるほど。CO2排出だけが環境問題じゃないですもんね。

問い合わせ殺到!?2020年ニュートラル宣言の影響はやはり凄かった。

皆さんご存知、「カーボンニュートラル宣言」!

カーボンニュートラル宣言は、菅前内閣総理大臣が2020年10月26日に出した宣言で、「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」としたものです。CO2排出量=吸収量となる、CO2実質ゼロの「脱炭素社会」を目指そう!という意図があるわけです。

2050年末まで、あと27年と...(27年後の自分、何やってんだろ?笑)

もちろん、当記事を読んでいる環境意識の高い皆さんは、2050年までのカウントダウンカレンダーを壁にかけ、刻一刻と近づいてくる2050年を感じてハラハラしていることと思います。

何だか達成するのが難しそうですが、CO2排出量=吸収量ということは、まずはCO2排出量を把握する必要がありますよね。

ですので、先ほど教えていただいた、環境負荷を数値化する「環境ラベルプログラム」がカーボンニュートラルに大きく寄与することとなります。

まずは、現状把握。

国を挙げて脱炭素社会を目指すというこの宣言によって企業の経営戦略にも大きな影響が出た中、環境ラベルの申請量はどう変化したのでしょうか?

ー宣言前後での環境ラベル申請数の需要は高まったのでしょうか?

電話が鳴りやまない、という表現がぴったりと言えるほどに、問い合わせ数は増えましたね。

今までは、自社の製品の環境評価していると示すことで生じる海外との取引におけるメリットがラベル申請のインセンティブとなっていたのが多数でしたが、宣言後は、サプライチェーン内でのコミュニケーションにおけるラベルの活用という目的が多く見られるようになってきました。

ー宣言前後では需要の変化が顕著だったのですね。
多くの企業が各々の環境意識を高める必要が出てきたはずですが、環境ラベルプログラムにおいて、企業が抱える課題はありますか?

先ほども話に出ましたが、プログラム内で使われるLCAという算定手法を理解していないと、情報開示までに時間がかかってしまうということが課題と言えるかもしれませんね。

「環境負荷の開示」が示唆する企業の本気度

調べたところ、エコリーフやCFPといった環境ラベルは合格/不合格の判定をするわけでなく、「環境負荷データの情報開示のみ」を行うと知ったのですが…

ーつまり、その評価価値の判断は読み手に委ねられるということなのでしょうか?

その通りです。環境ラベルプログラムは「正しい情報を開示しているかどうか」に着眼しているものとなります。情報を開示していると企業のイメージアップやESG投資対策としてのメリットがあります。

LEED

例えば、LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)と呼ばれる、建築物の環境性能に係る第三者認証制度があるのですが、エコリーフを取得していると加点対象になります。エコリーフやCFPで準拠しているのは国際的に定められている世界共通の規格なので、このような海外認証制度とも連携することができます。ラベルの効果は国内に留まらず、全世界で通用するということですね。

環境ラベルはその製品の環境負荷を数値化し公開するもので、この場合だとその数字の大小は関係しません。製品の原料調達から廃棄・リサイクルまで全て管理できているかどうか、環境負荷を視野に入れて製品設計から販売まで行えているかどうか、という事が重要視されており、そのようにして自社の製品の環境情報を適正に開示していることが環境問題への取り組みの観点から評価されるという流れです。

ー情報を開示できているということから、企業の環境問題への取り組み度合いを知ることができるということなのですね。

はい。ただ、もちろん、ラベルの中で開示されている情報を読み解いて、その製品が評価されることもあります。公共調達製品の場合など、定められたCO2排出量以下の製品のみが使用されるといった使われ方もあります。

世界は一体どこへ向かうのか?社会変容が起きるために。

世界全体の環境問題への注目度が増す現代。カーボンニュートラル宣言が出るなど、のんびりと他人事として看過することができない状況になっています。かと言って、私たちが行動を変化させるような環境知識を持ち合わせていないのも事実です。

そんな中、企業のサステナブル経営を補助・促進するSuMPO様は今後どのように社会を変えていこうと思っているのでしょうか?

ー最後に、SuMPO様の今後の展望をお聞かせください。

今後、世界がカーボンニュートラルに近づいていくのは間違いありません。他の環境問題にも本格的に取り組もうとしている現代、製品の環境情報の開示が注目されてきています。しかし、積極的な情報開示が行われてきている海外に比べて、日本はまだこれからです。

我々が取り組んでいる環境ラベルプログラムを通して、環境問題が企業戦略の中での重要な要素として検討されていくようになれば、社会全体の環境意識が高まるのではないかと思います。

環境問題に取り組みたいと思っても、「結局何をすればいいのか」「どの商品を選べばいいのか」というように、現在は手元にある判断材料が足りていないことが多いですよね。ですので、SuMPOの経験と技で環境に関する正しい情報を提供していきたいです。判断基準となる確かな数字を伝えていくことで初めて消費者の行動が変わり、社会変容が加速度的に起きるはずです。

戸川孝則さま、岩下博哉さま、本日は貴重なお時間を取っていただきありがとうございました!

最後に

いかがでしたでしょうか?
今回は、「脱炭素など環境情報の見える化」をテーマに、SuMPO様にお話を伺いました。

環境問題は全人類の取り組む必要のある大きな問題ですが、だからこそ一人ひとりの感じる責任が希薄になりがちです。また、誰もが「環境問題を食い止めなければいけない」と思っているはずですが、自身の行動に移そうとなると「で、どうしたらいいんだ?」と具体的に何をすべきか分からないことが多いですよね。

特に、「環境に優しい商品を選びたい」とは思っていても、購入の有無を決めるような明確な基準を持っている方は少ないかと思います。そんな現状だからこそ、環境負荷を消費者に開示するという環境ラベルを持つ商品が今後ますます増えていくべきですよね。環境負荷という掴めそうで掴めない実体だったものを数値化という形で知る事がきっかけで、私たち消費者の購買行動や環境意識の変容を引き起こすのではないでしょうか。

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今回の取材を経て、改めて「数値化することの重要性」を感じました。

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最後までお読みいただきありがとうございました!それでは!