排出したCO2は「なかったこと」に!?カーボンオフセットとは一体何?
こんにちは!皆さん、このあっつ~い中、元気にお過ごしでしょうか?
前回の記事に引き続き、今回も環境問題をテーマにした記事を書いていきます。
タイトルからも分かる通り、今回のテーマはこれ!
「カーボンオフセットって一体なに??」
皆さんは、カーボンオフセットという言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
意味はそのまま、「カーボン(排出されたCO2)をオフセット(相殺)する」、つまり、「排出しちゃったCO2を別のどこかで実現した吸収量/削減量で相殺する」ということ。
CO2排出量を削減するのは可能ですが、何かしらの経済的な活動がある限り、CO2排出をゼロにするのは不可能です。
そこで、例えばどうしても抑えられないCO2排出量分だけは、どこかの森林で吸収してもらうことで、「CO2排出をなかったことに」できるわけです。
でも、一体カーボンオフセットはどのようにして行われているのでしょうか?
・1トンのCO2排出量を相殺したいんだけど、どのくらいの森林が必要なの?
・森を増やせば、とりあえず吸収量も増えてカーボンオフセットになるってこと?
・年間どのくらいのカーボンオフセットが行われているの?
と、様々な疑問を解決するべく、今回は、一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)(以下略称「more trees」)の岸卓弥さまに、「森林によるカーボンオフセット」をテーマにお話を伺いました。
more treesは音楽家の坂本龍一さんが創立した森林保全団体で、「都市と森をつなぐ」をキーワードに森林保全活動を行っています。その取り組みの一つである「カーボンオフセット」に着目をし、取材を進めていきました。
では、いってみよー!
森林でカーボンオフセット?結局何をしているのか。
ーまず最初に、more treesの提供するカーボンオフセットサービスについて教えていただけますか?
森林保全活動を行うことで得られる環境価値(クレジット)を、企業が購入するという流れで行われています。
企業が排出したCO2量を森林に吸収してほしいと考えた際、自ら森林保全活動を行う、もしくは森林保全活動を支援するとなると、支援先の選定も必要ですし、植林活動や吸収量の算定など莫大な予算が必要になるのが現実です。
そのため、環境価値(クレジット)を購入することで、企業がより気軽にCO2排出量の削減に貢献することができるんです。
ー多くの企業が間接的に森林保全に関わることができそうですね。クレジットを販売したことにより得た収益はまた新たな森林保全活動に活用されると聞きましたが、具体的にどのような活動に活用されているのでしょうか?
間伐という木を間引く作業や植林という木を植えて森を増やす作業、林道と呼ばれる森に行くための道を作る作業を行うなど、地域によってカーボンオフセットで得た収益の活用方法は異なります。また、森林に親しんでもらうためのワークショップを開催することもあり、森林に関わる様々な活動に収益が使われています。
ーただ森林を面積を増やせば良いのではなく、手入れをして生きた森林にすることで、資源として持続的に利用できるような環境を作るというわけなんですね。
はい。「木を植え、育て、手入れをし、必要に応じて適切に伐採し、素材として活かす」というサイクルを維持することで、健全な森が維持されます。こうして森を健全に保つことで、CO2をちゃんと吸収してくれることにもつながります。
森林によるCO2吸収量、どうやって測定するの?
ー森林によるCO2吸収量はどのようにして認められているのでしょうか?
J-クレジット制度という国の制度上で実現したCO2吸収量が認証され、「クレジット」として売買可能な形で発行されます。このクレジットを購入することで購入者はオフセット(相殺)することができるわけです。
ただ森林があるだけではCO2吸収量は認められず、すでに適切な管理が行われた森林、もしくは今後適切な管理を行うことを約束した森林を対象にCO2吸収量が認められるのです。
J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。(https://japancredit.go.jp/より引用)
そうなります。実際のCO2吸収量は木の大きさを測ることで計算されているようです。(※1)直径と高さを測ることで、その樹木の体積を知り、そこから森林全体がどのくらいのCO2を吸収できるのかを測ることができます。
(※1)地面から約1.2mの胸の高さでの直径を測るため、「胸高直径」と呼ばれています。
そのモニタリング自体は地域の方々が行うのですが、それを報告書にまとめ、J-クレジット制度に認証されている審査機関が審査します。そこを通過すると、認証された分だけのクレジットが発行される仕組みになっています。
その発行されたクレジットを企業に販売することで、カーボンオフセットが成り立つということです。
ー一般的に、どれくらいの規模の量が購入されるのでしょうか?
これは企業によるのですが、数100トン~1000トン以上のCO2吸収分のクレジットが購入されています。予算や排出量次第になりますね。
カーボンオフセットの需要は、うなぎ上り?
特に近年、「脱炭素社会」や「カーボンニュートラル」といった言葉をよく聞くようになりましたが...
ー近年のカーボンオフセットの需要に変化はありますか?
はい、確実に需要は高まってきています。脱炭素社会への意識が高まり、カーボンオフセットへの注目が集まっていますね。カーボンニュートラル宣言をきっかけに、森林へ興味を持っていただける企業さんも増えました。
昨年の1年間で、約20~30社、約2000トンをオフセットしました。ただ、この数も、最近需要が高まってきた結果の過去最高の数なんです。まだ注目がいなかった時期はオフセット量は半分以下でしたね。
ー右肩上がりなわけだ。
インドネシアやフィリピン...海外での森林保全の緊急性
カーボンオフセットを行うためには、しっかりと管理の行き届いた森林が必要です。more treesはインドネシアとフィリピンにおいても森林保全をしているみたいですが...
ー海外で活動を行う理由を教えていただけますか?
日本国内をみると、多様性が失われている、手入れが行き届いていないといった問題があるんですけど、それでも国土の7割が森林に覆われてるだけまだましなんですよね。しかし一方で、インドネシアやフィリピンなどの海外を見渡すと、森林破壊がどんどん進められているため森林保全の緊急性が高いんです。
例えば、我々の活動地の1つでもあるインドネシアではアブラヤシという樹木が多く育てられています。これからパームオイルという植物油が搾り取れます。このアブラヤシなのですが、インドネシアの熱帯雨林を切り開いた場所で育てられているんです。熱帯雨林は生物多様性が非常に高く、切り開くことでそこに生息する動植物は棲み処を失ってしまいます。
実は、この森林破壊、「異国での関係のない出来事」ではなく、日本人もかなーり深く関係しています。我々が口にしているカップラーメンやフライドポテトの揚げ油、シャンプー、洗剤など、色々なものに使われているんですよ。ですので、我々日本人の消費とかなり近しい関連性があります。
more treesではそうした熱帯雨林を守ろうと、海外では植林を始めとした森林保全を行っています。また、インドネシアではBOS財団というオランウータンの保護をしている現地の団体と連携をしています。BOS財団は棲み処を失ったオランウータンを保護し、独り立ちできるようになったら森へ還す活動をしていますが、肝心の還る森が少なくなってきています。つまり、森林を保全することはオランウータンなどの森に暮らす動物を守ることにもつながるのです。
ー海外の森林もJ-クレジットの対象として扱っているのでしょうか?
そもそもJ-クレジット制度は日本の制度なので海外の森林に適用をすることはできませんが、過去にはVCSという国際的な制度に則ってクレジットを発行したこともあります。(現在は取り扱いしていません)。
ー今後、海外での拠点を増やす予定はあるのでしょうか?
そうですね。将来的には、アマゾンやアフリカなど森林減少が顕著で緊急性の高い地域にも活動の幅を広げていきたいという話は挙がっていますよ。
木材の輸入価格が"73%"上昇!?ウッドショックで家なんて建てられやしないよ..
2021年、木材・木製品・林産物の輸入価格が前年2022年の同月に比べて73%も上昇しました(※経済産業省サイトより)。今もピークは過ぎたとはいえ、数年前と比べるとかなり高くなっています。
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20220502hitokoto.htmlより画像引用
ーウッドショックの影響でどんどんと木材の値段が上がってしまいましたが...先ほどにもお話に出たように、日本の7割を森林が占めているのではないのですか?国内にある豊富な資源を利用せずに、流通コストがかかる海外からの輸入に頼っているのは何でなのでしょうか?
おっしゃる通り、ウッドショックは国産の林業にとってはビッグチャンスではあるんですが、そもそも現在の木材の流通元が「海外から」というのが大体なんです。戦後の日本には家に使えるような木が少なく、海外からの木材の輸入に頼っていました。そのときの流通システムが今も続いており、既に取引先が決まっているからだと思います。国産材に切り替えようとすると、新たにその流通ルートを確立する必要があり大変ですから...。
あとは、単純に林業の人手が足りないからというのも大きな理由かと思います。
輸入材が高いから国産材を使おうと思っても肝心の木を伐る人や加工する人がいない。これを機に人手を増やそうと思ってもいつまでウッドショックが続くかどうかわからない中、雇用までは手を伸ばしづらいという現状があります。
今後の展望は...
ー最後に今後の展望をお聞かせください!
今、more treesが力を入れているのが、単一で樹種構成のバランスが偏った森を、多種多様な樹種で構成される本来の日本の森に戻すということ。
森林面積は日本の国土の7割近くを占めていますが、その多くを占めているのが人工林であるスギやヒノキ。木の種類の偏りは、生物多様性にも深刻に影響を及ぼします。本来生息していた生物がスギやヒノキが多くある森林では生きていけないと、森林に住む生物の種類もまた限定的になってしまうんです。
そのため、広葉樹を含む様々な種類の木を植林することで、本来の多様な森に戻していくことが必要なんじゃないかと思います。すぐに生き物の多様性が戻る森になるわけではなく、100年200年のスパンの活動なので、今後も粛々とこの活動を進めていこうと思います。
多様性のある森をつくって、その森を上手く利用しながら共存していけたらとても嬉しいですね。
ーうーん、確かに。地方に行くと森林が広がっていますが、よく見ると針葉樹がほとんどだった気がします。これも人工林だったんですね。生物多様性の面から見ると、本来の森に戻すことの必要性を痛感します。
最後に
いかがでしたでしょうか?
近年、世間の注目を浴びている「カーボンオフセット」。排出した分のCO2を森林に吸収してもらう、というコンセプトは感覚的でとても分かりやすいですが、実際には何をすることでカーボンオフセットを実現できるのか?という点に関してお話を伺うことができました。
木があれば二酸化炭素を吸収してくれるから、と言って無暗に森林面積を増やすのは無謀。木も生き物、だから、お世話をしなくては生きた森林になりません。植林、間伐、伐採と、森林を健康な状態に保つためには人間の介入が必要不可欠です。
だからといって、企業が自ら森林保全活動を行うのは、資金面でも労力面でもなかなかハードルが高い。その時のもう一つの選択肢が、more treesが提供するようなカーボンオフセットサービスで、環境価値(クレジット)を購入するというプロセスを経て、森林保全活動を活性化できるということを学びました。
SECOND HAND(セカハン)では、中古iPhone・iPad・AppleWatch・MacBookなどの中古端末を販売しており、森林を活用したカーボン・オフセットを行うことで、お客様にご購入いただいた端末1台につきCO2を10kg削減(※)しています。
(※)SECOND HAND(セカハン)では、森林を活用したカーボン・オフセットを行うことで、ご購入端末1台につき、CO2を10kg削減しています。
カーボン・オフセットには、日本国内の森林を適切に管理することにより創出されたカーボンクレジットを活用しています。
最後までお読みいただきありがとうございました!ではでは!